研究概要 |
当該年度(平成12年度)は、成猫を用い実験I,IIをおこなった。 実験I:カオリン水頭症猫を作製し、ICP,BP,LaserfloによるCBFとCBV,electromedical NO electrodeによる脳内Nitric Oxide(NO)濃度を連続記録した。 (i)Spontaneous ICP elevation時のCBF,CBV,NO濃度の変動:plateau wave様ICP elevation時、極わずかに先行してCBVの増加とCBFの低下、NO濃度の上昇が観察された。BP,ETCO_2には殆ど変化を認めなかった。 (ii)水頭症猫のdorsomedial hypothalamic nucl(DMH)への(1)glutamate或いは(2)Ach微量注入の効果:(1)glutamateを微量注入すると、ICPのplateau wave様ICP variationが連続して惹起された。ICPの各plateau相に一致してCBVの増加とCBFの低下が見られ、また各plateau相に極軽度先行して前頭葉及び頭頂莱のNO濃度の上昇が観察された。(2)AchをDMHに微量注入すると、極軽度のBPの低下とCBFの低下,CBVの極軽度の上昇,ICPの上昇が惹起された。ICPの上昇に先行してNO濃度の上昇が見られた。 (iii)L-NAMEの静脈内投与の効果:NO合成阻害剤L-NAME(30mg/kg,IV)を投与直後、 ICP,CBV,CBFには殆ど変化を見なかった。静注後60分経てAchをDMHに微量注入するとL-NAME投与前のAch induced ICP elevation,CBF,CBVの諸変化は著しく抑制された。L-NAMEの作用は2時間後も軽度見られた。 以上の結果から前脳基底部惹起性脳血管拡張,ICP上昇にはNOが関与しており、少なくともintracortical NOS neuronが介在することが示唆された。 実験II:成猫を用い低脳温時-rewarming時の脳循環代謝,NO濃度の動態:CPP120mmHg,90mmHg,60mmHgの各群のCBF,CMRO_2,AVDO_2を検索すると、CPP60mmHg群では復温時にrelative ischemiaが顕著に見られ、glutamateの放出が多く、またNO濃度の再上昇は軽度遅れることがわかった。組織学的にもsevereなneurological damage,即ちミトコンドリアの著明なswellingとintracytoplasmic vacuoles,endoplasmic reticulumの軽度のfragmentationがみられた。復温時CPP60mmHgでは、irreversible ischemiaが起きるのでCPPを90mmHg以上に保つ必要があることが判明した。
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