研究概要 |
微小管のdynamicsに関わる蛋白である、微小管付随蛋白 microtubule-associated protein(MAP)をantisense oligonucleotideにより抑制することにより、ラットC6グリオーマの増殖を抑制しうるかという点について検討した。〈方法〉微小管付随蛋白の代表的なものの一つであるMAP1Aの翻訳開始部位近傍の塩基配列に対する21merのantisense phosphorothioate oligonucleotideを合成し、in vitroおよびin vivoでC6グリオーマ細胞にLipofectinと共に投与した。陰性対照実験として、sense oligonucleotideおよびscramble oligonucleotideを投与した実験を行った。in vitroではcolony forming assayにてin vivoではラットの生存期間によりその効果を判定した。〈結果〉MAP1A antisense phosphorothioate oligonucleotideは、sense,scramble oligonucleotideのいずれに対しても有意にC6グリオーマ細胞のコロニー形成能は減少させることが示された。またin vivoでのMAP1Aに対するantisense oligonucleotide投与群ではsense,scramble oligonucleotide投与群に比し、ラットの有意な生存日数の延長がみられた。さらにin vivoでoligonucleotideを投与したC6グリオーマ細胞を回収し、flow cytometryによりantisense,sense,scramble oligonucleotide投与の各群で細胞周期の同定を行ったところ、MAP1Aに対するantisense oligonucleotide投与群ではsense,scramble oligonucleotide投与群に比し、有意なG1 arrestが生じることが示された。〈考察〉細胞分裂時に重要な役割をはたす微小管のdymanicsに関与すると考えられる微小管付随蛋白の発現抑制はグリオーマ細胞の増殖を抑制しうる可能性があると考えられた。またin vivoでもグリオーマ細胞の増殖を抑制しうる可能性があると考えられた。さらにその増殖抑制の機序がG1 arrestである可能性が示された。
|