マウスグリオーマ細胞に副シグナルであるB7-1ならびにICAM-1をそれぞれまたは両者を遺伝子導入させ、遺伝子発現腫瘍細胞を作成した。これらの細胞の増殖能を調べるために同系マウス(B10.A)ならびにSCIDマウスの皮下に接種したところ、いずれも同系マウスでは拒絶されたが、SCIDマウスでは親株とほぼ同じ発育を示した。これらの細胞の抗腫瘍効果を比較すると、マウス皮下腫瘍モデルにおいてはICAM-1単独遺伝子導入細胞の抗腫瘍効果が最も低く、B7-1ならびにICAM-1両者を遺伝子導入した腫瘍細胞が最も強い抗腫瘍効果を示した。しかし脳腫瘍モデルにおいてはB7-1ならびにICAM-1遺伝子導入細胞だけでは不十分であり、インターロイキン12の腹腔内投与を併用することにより明らかに生存期間を延長させることができた。この抗腫瘍効果のエフェクター細胞はCD8陽性T細胞であった。インターロイキン12腹腔内投与単独では抗腫瘍効果は認められなかった。次にこれらの遺伝子を放射線感受性プロモーターの下流につなぎ、放射線照射による遺伝子発現のオンオフを可能とするシステムを検討した。用いた放射線感受性プロモーター(EGR-1)はプロモーター活性が低く、また完全なオンオフができなかったため結局これは用いなかった。副シグナル以外にも樹状細胞を刺激することができるCD40Ligandもマウスグリオーマ細胞に遺伝子導入し現在その抗腫瘍効果を樹状細胞との併用も含めて検討中である。
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