ヒト脳腫瘍組織片(良性神経膠腫、悪性神経膠腫および正常脳白質)を用いて、同一凍結材料から、病理組織標本用とmRNA抽出用の連続切片を作成し、まずヘマトキシリンエオジン染色で正常脳組織、および腫瘍の悪性度を確認した。次に連続切片から抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行い、それぞれの組織でのLRP(lipoprotein receptor related protein)およびuPA(urokinase)receptorのmRNAの発現を調べた。さらに同一材料からGAPDHのmRNAをコントロールとして検出して、uPAreceptorおよびLRPの発現量を半定量的に検討した。また、RT-PCRに用いた組織片の連続切片を用いてLRPの免疫染色を行い、LRPの組織中での局在を検討した。その結果、悪性神経膠腫、特にglioblastomaではLAP mRNAが高頻度に発現されて、免疫染色法でもLRPは腫瘍細胞と腫瘍血管に陽性所見が得られた。正常脳組織中ではneuronに陽性所見がみられた。各種ヒトGlioma細胞株および腺癌細胞株においても同様にLRP mRNAの発現を検討し、悪性神経膠腫のcell lineを用いたin vitroの実験を行った。悪性神経膠腫cell line5種類の免疫組織学的検討やMatrigel in vitro invasion assayで生物学的特徴を確認した。これちのcell lineのうち、LRPを発現していないglioblastomaのcell lineであるU105MGに単離したLow density lipoprotein receptor-related protein(LRP)のプラスミドDNAをリボソーム法でtransfectionした。Markerで陽性細胞を選別したのちに、cell line中のLRP mRNAおよび蛋白発現量をそれぞれNorthern blotおよびWestern blotで確認しtransfectantを単離して、U105MG-LRP(+)とした。In vitro invasion assay用のチャンバーを用いて、Matrigel in vitro invasion assayを行い、LRP cDNAをtransfectionしたU105MG-LRP(+)が、wild typeのU105MG cellに比較して浸潤能が増大したことを確認した。結論として、LPRは悪性神経膠腫の腫瘍細胞膜および腫瘍血管に発現され、uPA systemの代謝およびuPA receptorのリサイクルを促進することにより悪性神経膠腫の浸潤能および腫瘍組織内での血管新生に関与している可能性が示唆された。
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