研究概要 |
平成10年度は放射線学的研究を拡張し、癌転移胸椎モデル作成の基礎資料とした.また、成羊から摘出した胸椎を使用して癌転移胸椎モデルを作成し、生体力学実験を開始した.前年度の予備実験の結果から、転移胸椎の安定性には、肋椎関節の機能温存が極めて重要であることが推定されたので.本年度の本実験においては、(1):椎体部分転移,(2):(1)+肋椎関節破壊モデル,(3):(2)+椎弓根破壊モデル、(4):(3)+片側椎間関節破壊モデルの4段階の破壊モデルを作成し、各群で5〜6個のモデルに対して力学試験を行った.椎体部分転移モデルでは、椎体破壊の程度の定量のため、力学試験前にCTを撮像した.力学試験は胸椎の長軸方向の荷重制御方式とし、腫瘍モデル椎に明らかな破壊が生じるまで負荷を増大させる方式をとった.椎体部分転移モデルでは正常椎に比し、明らかな破断強度の低下は見られなかったが、これに肋椎関節破壊、椎弓根破壊、片側椎間関節破壊と破壊の程度を増すに従って破断強度の低下の著しい低下がみられた.この結果から、肋椎関節破壊、椎弓根破壊、片側椎間関節破壊のいずれも癌転移胸椎の安定性を著しく損なうと考えられた.しかし実験検体数が小さく統計学的検討はできなかった.次年度の予定として年度早期に各群の実験固定数を増加させ統計学的処理を行う予定である.さらに胸郭全体を温存した状態での癌転移モデルを作成し、胸郭自体の癌転移胸椎における安定効果に関する実験も予定している.また、実験結果は内外の脊椎外科に関連した学会に発表する予定である.さらに、今後の予定として、頚椎ならびに腰椎の癌転移モデルに関する同様な実験を行い、癌転移脊椎の脊椎高位による安定性の相異に関して検討を検討している.
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