1. ビーグルの成犬28頭について、膝前十字靭帯に、特別に開発した2重螺旋管式液体窒素プローブを用いたin situ凍結処理法を行って線維芽細胞を死滅させた後、生食で解凍し14頭ずつ2群に分けた。いずれの群においても凍結処理後に前十字靭帯脛骨付着部を、脛骨骨幹近位前面の皮質骨を含む円筒形の骨片付きで遊離させ、第1群では前十字靭帯の脛骨付着部の骨片を元の位置に固定し、正常の前十字靭帯の張力へもどした(Sham手術群)。第2群では脛骨遠位付着部の骨片を近位方向に3mm挙上して前十字靭帯に加わる張力を弛緩させて遠位骨片を脛骨に固定した(Relax群)。Sham群と除負荷群における、凍結処理前十字靭帯の力学的特性と微細構造との変化の違いについて以下の知見を得た。 2. 力学的試験においてSham群とRelax群とを比較すると、断面積に関しては、12週においてRelax群がsham群より有意(p<0.05)の高値を示した。引張り強度に関しては、いずれの時期においてもRelax群がSham群よりも有意(p<0.05)の低値を示した。tangent modulusに関しても、いずれの時期においてもRelax群がSham群よりも有意(p<0.05)の低値を示した。破断伸びに関しては、いずれの時期においても有意差を認めなかった。 3. 微細構造解析を行った4頭においてSham群とRelax群とを比較すると、術後6週でSham群では凍結処理前十字靭帯の実質部表層に線維芽細胞の進入を認めたのに対し、Rclax群では実質間隙に楕円形の核を有する細胞の進入を認めた。術後12週では、両群で前十字靭帯の実質全体に線維芽細胞の存在を認めたが、Sham群では侵入した細胞の核が紡錘形をしていたのに対して、Relax群では円形または楕円型の核を有する細胞が大部分を占めていた。
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