健康男子学生11名(平均年齢23歳)を被験者として、室温22度、湿度50〜60%に環境制御された実験室へ入室させた後、1分毎に0.2kpづつ負荷量を増加するランプ運動負荷法により換気性作業閾値(VT)を決定した。VTを指標とした一定運動負荷試験は、VTの運動強度(VT条件)、VTより20%負荷を増した+20VT条件、およびVTより20%負荷を少なくした-20VT条件の3条件で17分間の持続運動を行わせ内側広筋の筋電図、心電図を測定した。運動中の平均心拍数は-VT条件では99/分、VT条件は116/分、+20VT条件では132/分を示した。 最大エントロピー法(MEM解析)を用いた筋電図スペクトルは20-50Hz、50-100Hz、100-150Hz、150-200Hzの帯域に区分し、各々の帯域のパワースペクトル密度(PSD)及び20-200Hzの全パワー値のPSD(Total PSD)を全区間2秒間づつ求めた。 RR間隔変動のMEM解析は1分毎に行った。帯域区分はLF成分を0.04-0.15Hz、HF成分を0.15-0.4Hzとし各帯域毎にPSDを求め、さらにL/H比を算出した。 一定運動負荷におけるTotal PSDは+20VT条件がVT条件と-20VT条件に比較して有意の増加を示した。%PSDは20-50Hz帯域および50-100Hz帯域では3条件間に有意な差が認められなかったが、100-150Hz帯域と150-200Hz帯域では+20VT条件は-20VT条件に比較して有意な増加が認められた。 一定運動負荷におけるHF成分は運動負荷開始時に比較して各条件とも有意な減少を認め、運動負荷量に依存した。+20%VT条件での100Hz以上の帯域の経時的な増加は一定運動負荷の維持にタイプ2B線維による筋収縮が増えてきたことを示唆している。一定運動負荷のHF成分は運動負荷の強度に依存して減少したことから、HF成分は運動強度と関連することが推測された。
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