研究課題/領域番号 |
09671463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岩原 敏人 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80133817)
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研究分担者 |
佐藤 雅規 旭川医科大学, 医学部, 助手 (40281886)
熱田 裕司 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90167924)
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キーワード | 脊髄損傷 / 脊髄誘発電位 / 人工脳脊髄液 / 二次変性 / 酸素 |
研究概要 |
今回我々はラット急性脊髄損傷モデルで、脊髄損傷後の2次変性に対する脊髄灌流療法の有効性を、脊髄誘発電位(SCEP)を用いて評価したので報告する。Wister系成熟雄ラット10匹に気管切開を行い、halothane吸入麻酔後、suxamethonium chrolideにて非動化した。第8-10胸椎を椎弓切除し、その頭尾側棘突起にてstereotaxic frameに固定した。術野頭尾側に硬膜外カテーテル電極を挿入し下行性脊髄誘発電位を記録した。刺激強度は最大上刺激とし、解析はSCEP第1電位の振幅を指標にした。脊髄損傷モデルは椎弓切除部の胸髄背側正中を、micromanipulatorにより0.01mm/secの低速度で圧迫して作成した。損傷程度をコントロールするために、圧迫中のSCEPをモニターし、振幅が受傷前の10%以下になった時点で圧迫を中止した。 10匹のラットを2群に分け、5匹を脊髄灌流群、残りの5匹を無治療の対照群とした。脊髄灌流群は圧迫解除直後に損傷部硬膜を切開し、37℃に加温し95%酸素で飽和させた人工脊髄液で損傷部脊髄を4時間灌流した。灌流速度は1ml/min程度とした。両群とも受傷前より受傷後4時間までSCEPを記録した。対照群では脊髄損傷後やや回復した振幅が漸減し、4時間後にはほぼ消失した。脊髄灌流群では損傷後に回復したSCEP振幅は減少せず4時間後まで漸増傾向がみられた。受傷後4時間で、脊髄灌流群はSCEP振幅が平均43.6%に改善したのに対し、対照群では振幅が平均0.2%でほとんど波形を認めず、統計学的有意差を認めた。今回SCEP振幅を指標に作成したモデルは受傷直後は波形の回復を認めるが、その後無治療の場合4時間で波形が消失する再現性を認めた。この変化は脊髄虚血、微小出血、炎症反応など脊髄の2次変性を表すものと考えられた。今回の結果から局所脊髄灌流は損傷脊髄の機能回復に有効であったが、この効果は脊髄環境の改善とchemical mediatorなどの洗い出しによるものと考えられた。
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