これまで経皮的埋め込み電極を用いて脊髄損傷、脳卒中などによる麻痺肢の再建を行ってきた。しかし、消毒の煩わしさや感染の危険、断線・移動などの問題があった。そのため、完全埋め込み電極を用いたシステムの開発がこの分野では必須であった。本研究では、今年度(1)片麻痺再建用完全埋め込み電極の開発、(2)本電極を用いたブロック刺激による筋疲労抑制実験、を行った。電極は総腓骨神経に巻き付けることができ、生体内安定性が高く、インピーダンスが低く、断線・移動の起きにくい双曲カフ型電極(AKITA CUFF ELECTRODE)を開発した。まず動物実験に使用した。麻酔下にラットの坐骨神経上に本電極を巻き付け駆動刺激用とし、さらにその遠位にブロック刺激用として計2本の電極を設置した。刺激は極めて安定しており、電極周囲に異物反応なども認めなかった。頻回、長期の刺激でも安定しており、十分に実用的であり、ヒトヘの応用も可能と思われた。ラット12匹18肢を用いたブロック刺激による筋疲労抑制実験では、従来いわれていた数百から数万Hzの高頻度刺激でなくとも駆動刺激100Hzではブロック刺激周波数20〜100Hzでも筋疲労抑制効果が得られることが判明した。本結果は、ヒトに完全埋め込み式再建システムを応用する場合、筋疲労抑制により長時間にわたり動作再建をするものである。今後は、closed-loop controlに対応させるため、間欠的なブロック刺激下での筋疲労の評価が必要である。
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