研究概要 |
腱板完全断裂37例40肩(平均年齢61歳)を対象とした。なお上腕二頭筋長頭腱断裂など上腕二頭筋に異常を認めたものは対象から除外した。対照として正常40例40肩(平均年齢50歳)を用いた。 1.方法(1)筋電図学的検索 上腕二頭筋の筋活動の測定に動作表面筋電図を用いた。座位をとらせた被験者に、肘関節伸展位、前腕回内位、手指を伸展させた状態とし、肩甲平面上での挙上動作を、負荷無しおよびlkg負荷にて測定した。筋電信号は上腕二頭筋の筋腹に貼付した表面電極で導出し、記録した。また同時に挙上角度も測定し、挙上30度、60度、90度、120度に至る時間を求めた。得られた筋電波形を絶対値積分し、各角度における積分電位を計測した。積分電位は最大収縮時の積分電位に対する百分率、%MVC(percent maximun voluntary contraction)で表示した。(2)屑関節筋力測定筋力測定の対象症例は腱板断裂肩33肩と正常肩38肩であった。動的訓練評価装置を用い、屑関節の内外旋および内外転の等運動性筋力を測定した。角速度毎秒60度および180度の2種類の速度にて測定した。測定値は体重当たりのピークトルクを用いて表し、腱板断裂肩および正常肩の上腕二頭筋の筋活動との関連を検討した。 2.結果(1)筋電図学的検索 正常肩の上腕二頭筋の%MVCは負荷の有無、挙上角度にかかわらず、すべて10%未満であった。一方、腱板断裂肩においては、腱板断裂肩40肩中14肩(35%)に負荷なしで10%以上の%MVCを認めた(増加群)。1kg負荷では増加の程度が有意に増した(p<0.0055)。また、増加群14肩の%MVCは、挙上角度の増加に伴っても有意に増した(p<0.0001)。残りの26肩は正常肩と同様に負荷の有無、挙上角度に関わらず10%未満であった(非増加群)。(2)屑関節筋力測定 各方向への筋力は正常肩、非増加群、増加群の順に小さくなった。内旋筋力は角速度60度、180度それぞれで増加群が正常肩に比べ有意に低値を示した(p=0.0111,p=0.0450)。外旋筋力は角速度60度、180度それぞれで腱板断裂肩の2群が正常屑と比べ有意に低値を示した(増加群:p=0.0101,p=0.0236、非増加群:p=0.0239,p=0.0221)。内転筋力は角速度60度、180度いずれでも3群間に有意差を認めなかった。外転筋力は角速度60度、180度それぞれで内旋筋力と同様に、増加群が正常肩に比べ有意に低値を示した(p=0.0075、p=0.0246)。 以上から上腕二頭筋は腱板断裂によって生じた筋力低下を補助する機能をも果たしていると考えられた。
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