【目的】 SCIDマウスの後肢の大腿骨内にヒト骨肉腫を移植した骨肉腫モデルを作成し、骨を介したelectrochemotherapyの効果について検討することを実験の目的とした。 【対象と方法】 実験群を、抗癌剤・電気穿孔群(D_+E_+)、非処置群(D_-E_-)の2群に分け、単純X線写真より腫瘍径(膨隆した骨の最大長径および横径)を測定し、腫瘍体積を求め経時的に比較した。BLMの腫瘍組織内濃度の測定は、抗癌剤・電気穿孔群(D_+E_+)、非電気穿孔群(D_+E_-)の2群に分けelectroporationの効果を比較検討した。病理組織学的検索では、反応性被膜形成、壊死について調べ、更にproliferating cell nuclcar antigen(PCNA)を用いて、陽性細胞の分布および標識率を調べた。 【結果】 腫瘍モデルは、単純X線写真上、大腿骨遠位に骨透亮性腫瘍占拠病変の所見を示した。腫瘍モデルは、骨皮質が菲薄化・膨隆し腫瘍占拠病変の最大径が5mmに達するまでにおおよそ2ヶ月間を要した。(D_+E_+)群における腫瘍径は、単純X線写真上2ヶ月にわたり腫瘍径は縮小した。その後2ヶ月を過ぎる頃から徐々に腫瘍は増大に転じた。一方、未処置の(D_-E_-)群では、時間の経過に伴い骨破壊と腫瘤陰影の増大を認めた。BLMの腫瘍組織内濃度は、抗癌剤・電気穿孔群(D_+E_+)において非電気穿孔群(D_+E_-)に比べて有為に高い値を示し、骨内の腫瘍組織にもBLMが取り込まれるelectroporationの効果と考えられた。病理組織学的検索では、おおよそ6週目までは腫瘍周辺の線維性被膜は厚く、被膜にマクロファージ様の細胞浸潤と伴っていた。腫瘍中心部には壊死像が認められ、更に周辺には腫瘍細胞の密度は低下し、基質に線維化が生じた。更にproliferating cell nuclear antigen(PCNA)による検索では、陽性細胞の分布および標識率が経時的に減少していることが認められた。骨を介した荷電においても、骨内病変に対するelectrochemotherapyが殺細胞効果を有することを裏付ける所見と考えられた。
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