腫瘍茶房の増殖動態にアポトーシスが関与していることが着目されている。私たちは、血清依存株のGc-4 SD線維肉腫細胞を用いて、培養液から血清を除去すると、増殖が抑制され、アポトーシスが誘発されることを報告した。今回、同様のアポトーシスが、血清等の蛋白質の非存在下でも対数的に増殖するGc-4 SD細部の亜株、Gc-4 PF線維肉腫細胞の増殖にも発現しているのかどうかを調べた。 1)培養時の形態より、Gc-4 SD細胞は牛胎児血清存在下ではM期に入っている細胞が確認された。しかしながら、無蛋白培養液中ではM期の細胞は消失し、細胞質の断片化を呈するアポトーシス細胞が散見されるようになった。一方、Gc-4 PF細胞ではM期の細胞とアポトーシス細胞が全体によく散見された。 2)フローサイトメトリー法でHoechst 33342に高染性の小型なアポトーシス細胞が、無蛋白培養においてGc-4 SD細胞と同様に発現しており、全細胞の約3分の1が、この死滅過程の発現細胞であった。 3)このアポトーシスの発現は、アガロースゲル電気泳動では高分子のクロマチンの断片として確認され、蛋白非存在下での親株であるGc-4 SD細胞に発現たアポトーシスと同様の死滅過程である事が確認された。 4)DNAをPIで染色してフローサイトメトリー法で確認すると、無蛋白培養においてGc-4SD細胞はG_<0/1>期への集積がみられたが、Gc-4 PF細胞では、S期の細胞が10%増えていた。 以上、本年ではGc-4 PF細胞が、無蛋白培養系で増殖するのに、アポトーシスを抑制することより、むしろアポトーシスを受け入れて細胞分裂の制御を変えることにより対数増殖を維持していることが示唆された。今後、さらに細胞分裂の詳細な検討を定量的に行うとともに、これらの現象に関与する分子の解明を行う予定である。
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