1.昨年度までに、線維肉腫細胞の無蛋白培養株Gc-4PF線維肉腫細胞の増殖に包含されていることを確認し、増殖動態の中で細胞分裂とアポトーシスが一定の割合いで発現していることを定量的に証明した。さらに、Gc-4PF細胞の分裂制御に関与するメカニズムに、アポトーシス関連ではp53、細胞周期制御分子ではp34^<cdc2>が関与することを明らかにした。本年度はさらに分子機構を検索してp53関連のp21にもこの肉腫増殖の動態に関与を示唆する発現形式があることを明らかにした。 2.Gc-4PF線維肉腫細胞の増殖にアポトーシスが包含されていることより、腫瘍細胞自身が増殖を抑制する因子の分泌をしているかどうかを調べたところ、培養上清に認められ、その分子生物学的特性を検索した。 1)倍溶液による増殖抑制は、細胞数により発現時期が異なり、多いほど早期に抑制が見られた。 2)培養上清によりアポトーシスはむしろ抑制された。 3)培養上清の添加により細胞周期の発現パターンが変化した。 4)陽イオン交換体と陰イオン交換体で、いずれも2つのピークを認めた。 これらが線維肉腫細胞の増殖に包含されているアポトーシスの発現に関与している可能性を示唆した。 以上、本年度では線維肉腫の増殖の中に発現するアポトーシスに関与する分子種を明らかにし、さらにシグナルを介する機構の存在を示唆することができた。
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