生体で増殖している種々の肉腫組織には、自ら死に至る機序であるアポトーシスを起こしている細胞が混在する。私達は血清依存株のGc-4SD線維肉腫細胞を用いて、培養液から血清を除去すると、細胞増殖が抑制されるとともにアポトーシスが誘発され、その発現過程にはクロマチンの高分子量断片形成が含まれることを報告した。今回、同様のアポトーシスが、血清等の蛋白質の非存在下でも対数的に増殖するGc-4SD細胞の亜株、Gc-4PF線維肉腫細胞の増殖にも発現しているのかどうかを調べた。培養時の形態より、Gc-4PF細胞ではM期の細胞とアポトーシス細胞が全体によく散見された。フローサイトメトリー法でHoechst 33342に高染性の小型なアポトーシス細胞が、無蛋白培養においてGc-4SD細胞と同様に発現しており、全細胞の約3分の1が、この死滅過程の発現細胞であり、高分子のクロマチンの断片が確認され、蛋白除去時のGc-4SD細胞に発現したアポトーシスと同様の死滅過程である事が薩認された。細胞周期を調べると、無蛋白培養においてGc-4SD細胞はG_<0/1>期への集積がみられたが、Gc-4PF細胞では、S期の細胞が10%増えていた。以上より、Gc-4PF細胞が、無蛋白培養系で増殖するのに、アポトーシスを抑制することより、むしろアポトーシスを受け入れて細胞分裂の制御を変えることにより対数増殖を維持していることが示唆された。次に、増殖関連分子種の発現を検索したところ、p53に発現低下、細胞周期制御分子ではp34^<cdc2>に蛋白レベルの発現低下の回復が確認された。今後、線維肉腫細胞の増殖に包含されているアポトーシスを制御する分子群の発現を広く、そして詳細に検索することにより、線維肉腫の増殖に発現するアポトーシスを解明し治療に応用したい。
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