研究概要 |
組織吸収性のCPLA(ポリ乳酸共重合体)と骨誘導能が期待されるβTCP(リン酸三カルシウム)との複合体であるTCP/CPLA複合体は熱可塑性を有し骨組織に置換されうる新しい複合体である. 骨欠損に対し骨組織を充填させる方法としては自家骨組織による骨移植術が一般的であるが,採取部の機能障害や量的に限界があることが問題である.これらの問題に対し近年骨形成蛋白質や他の成長因子を用いる骨形成促進法が検討されているが,治療が高額となる問題や効果の確実性に疑問があるなどの問題を残している.これらの問題を克服する新しい骨欠損の治療法として,TCP/CPLA複合体の特性を生かして骨欠損を骨組織で充填させるため,人工骨膜として用いる方法の可能性を検討した.平成9年度は犬の脛骨の骨欠損モデルを用いたパイロットスタディーを行った。方法は脛骨中央に20mmの骨欠損を作成し,その一周を取り巻くように形成したTCP/CPLA複合体膜で欠損部を被う.欠損部の近位と遠位を創外固定器で固定して術後12週間の骨形成の状態を4週ごとにレントゲン撮影で観察し,さらに術後8週と12週の骨形成を組織学的に検討した.パイロットスタディーには雑種成犬5頭を用いた. レントゲン学的には術後4週ですでに骨欠損部を被ったTCP/CPLA膜を裏打ちするように明らかな石灰化が欠損部全長にわたり認められた.8週ではさらに石灰化の密度は増加した.12週になると欠損部の全周にわたる骨組織による架橋が認められた.この結果は他の施設が報告しているポリ乳酸を骨膜として用いた家兎の実験結果と類似しているが,石灰化構造の出現や密度の増加はTCP/CPLA膜の方が優れていると考えられる.しかしながら成犬を用いる本モデルは欠損部の固定法に難があることが判明した.今後家兎の橈骨の骨欠損モデルを用いて定量的な検討を継続する予定である.
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