研究概要 |
1.骨軟部腫瘍の吸引細胞診における標的因子の解析 我々はこれまでに、骨軟部腫瘍のうち骨肉腫と悪性線維性組織球腫について、その組織由来について検討してきた。一般的に腫瘍組織中には、腫瘍細胞のみでなく宿主由来の血管内皮細胞、線維芽細胞やマクロファージをはじめとする血球由来の細胞が混在している。骨軟部腫瘍は間葉系由来であるため、従来、腫瘍細胞と宿主由来の反応性に出現する間葉系の細胞とを明確に鑑別することは困難を伴うことが多かった。また、吸引細胞診では、組織の構築が失われており、細胞一個一個の解析が必要なため診断には熟練を要した。今回、我々はヒト培養細胞の異種移植モデルにおいて非放射性同位元素のジゴキシゲニンを用いたin situ hybridization法により、骨軟部腫瘍由来の腫瘍細胞と宿主由来の反応性細胞を細胞レベルで明確に区別する方法を確立した。通常の研究室で簡便に行うことができ、細胞一個一個のレベルまで判定できるこの手法は、吸引細胞診断に画期的な変革をもたらすものと考えられる。今回得られた情報をもとに、臨床症例の吸引細胞診における細胞由来判定の指標となるような腫瘍特異的遺伝子を解析中である。また、骨肉腫、悪性線維性組織球腫以外の骨軟部腫瘍についても同様に組織由来、腫瘍特異的遺伝子について解析中である。 2.吸引細胞診における in situ hybridization、in situ PCRの手技の確立 ユ-イング肉腫には遺伝子の特異的な転座があることが知られている。我々はユ-イング肉腫から樹立された細胞株をヌードマウス皮下に移植し、ユ-イング肉腫の腫瘍モデルを作製した。この腫瘍モデルから吸引採取した細胞のmRNA,DNAの至適保存条件、また、in situ PCRに最適の標本作製方法について検討中である。これらのモデル実験をもとに臨床例への応用を検討している。
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