血管柄付き骨膜移植の臨床応用を目的として、ラット下腿において血管柄付きで骨膜を挙上した。さらにこの骨膜に骨形成因子を作用させ、移植可能なprefabricated骨・骨膜移植片が作成できるか検討した。材料と方法:ラットの下腿を解剖学的に剥離展開し、下腿内側の骨膜が大腿動静脈の枝である伏在動静脈からの血管によって栄養されていることを確認した。顕微鏡下に下腿内側の骨膜を骨から剥離した。伏在動静脈さらに中枢では大腿動静脈により栄養されるこの部の骨膜を用いて血管柄付き骨・骨膜移植片を作製した。骨膜刺激には骨形成因子を用いた。骨形成因子の量は10μgに統一し、骨形成因子の担体にはポリ乳酸ポリエチレングリコールブロック共重合体(以下PLA-PEG)を用いた。ラット20匹を各5匹づつからなる4群に分け、各群において下腿内側で骨膜を露出した。1群では骨膜の剥離・挙上のみ行い、2群では骨膜を剥離・挙上したあと担体PLA-PEGを骨膜下に移植した。また3群では骨膜を剥離・挙上したあと骨膜下に骨形成因子を含むPLA-PEGを移植した。4群では骨膜の剥離はせず、骨膜の上に骨形成因子を含むPLA-PEGを置いた。術後3週で脛骨を摘出、ソフテックス撮影および組織学的方法を用いてにも新生骨の有無、量を検討した。結果:1群、2群では少量ではあったが新生骨形成が認められた。3群ではほとんどすべてのラットにおいて従来の皮質骨と骨膜の間に明かな新生骨の形成が認められた。周囲に筋組織の無い骨膜上に骨形成因子を含む担体を移植した4群においては新生骨の形成、骨膜の肥厚は全く認められなかった。考察:骨膜を挙上するとその手術侵襲だけで骨形成が生じ、骨膜の骨新生能が確認された。しかし形成された骨量は少なく骨膜移植単独では充分な骨形成は生じにくいと思われた。これに対し、骨膜下に置いた骨形成因子で骨膜を刺激すると、移植可能なprefabricated骨・骨膜が形成された。
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