われわれは1997年より1999年において、下肢における皮弁・筋弁による長期成績の検討と治療法の開発、さらに大網弁、筋弁の創傷治癒に及ぼす影響を調査研究した。 下肢の骨・軟部悪性腫瘍の再建で3年以上経過した症例は、112例であり皮弁・筋皮弁と骨弁・人工関節を併用することにより患肢温存ができ、患者の満足、QOLの向上に大きく貢献した。欠損が大きい一部の症例では加温処理骨を利用し、手術侵襲の軽減をはかった。この場合には特に血行の良い筋弁での被覆が有用であった。また、整形外科医とともに二分脊椎や糖尿病等に伴う、難治性の皮膚潰瘍などの長期経過観察を基盤とした外科的治療と同時に保存的療法、リハビリテーションといった一連の治療方針を提示した。さらに、現在新しい皮弁技術として、骨癒合が得られない困難な症例では、再度大網移植により長い血管茎と血行豊富な組織を移植しその先への血管柄付き腓骨の併用により骨癒合をはかり成功している。 大網弁については、動物実験で、ラットの大網のlipid fractionの作用を検討し、皮弁の生着面積拡大、組織学的な血管拡張そして皮弁や周囲組織の著明な血管新生を起こすことを明らかにした。加えて、可変性に富み、血管茎のbridgingにつかえるといった大網の形態的な特徴をいかして感染創や、いままで形成外科医が使用することが少なかった下肢の再建にも、われわれはこれを積極的に利用し、大網の普及、適応の拡大を行った。我々は約10例において従来1つの遊離皮弁では治癒困難であった下肢の病変に対し、大網と皮弁あるいは骨弁を併用することにより、良好な成績をあげている。また大綱の採取に関しても新しい工夫を行った。内視鏡採取から内視鏡を併用したミニ開腹術、ハンドポート使用の内視鏡手術と、手術侵襲を少なくし、採取時間の短縮をはかった。これらは内視鏡研究会、形成外科学会等で発表した。
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