研究概要 |
研究方法:当科で継代中の軟部発生の悪性線維性組織球腫1株を60匹のヌードマウス背部皮下に、1匹につき左右に一つずつ移植(120腫瘍)し、腫瘍体積が約100mm^3になった時点で、各群15匹ずつ(30腫瘍)の4グループに分けた。第1群から第3群は抗癌剤投与群として、各々アドリアマイシン、シスプラチン、ビンクリスチンを4日おきに3回、それぞれの薬剤のマウスに対する1/3LD50に相当する量を腹腔内に投与した。コントロール群には生食を同容量を投与した。 これらの処理後、実際の腫瘍増殖を腫瘍径を測定することにより求めると同時に、各群のうち3匹ずつをそれぞれ研究第1、5、9、17、33日(5回)に、Brduおよびこれに類似のIrduを一定時間の間隔にて腹腔内投与した後に、頸椎脱臼にて屠殺した。腫瘍組織を採取し、ホルマリンにて固定し、通常のパラフィン切片を作成した。これらの切片を免疫組織化学的にBrdu,Irduを染色し、Brdu陽性細胞、Irdu陽性細胞および両者が陽性の細胞をカウントし真のS期時間を算出した。同時にPCNA,Ki-67の各種増殖パラメーターを染色し、カウントした。また同様の標本を免疫組織化学的に、in situニックトランスレーションを用いてネクローシスとアポトーシス細胞の全体の細胞数に対する比率を求めた。 研究結果:3種類の薬剤はコントロール群と比較して、全て体積から見た腫瘍増殖の抑制効果が得られた。抑制効果の順序はビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチンであり、体積より見た腫瘍増殖効果は、上記マーカーのうち、実験第1日目に得られた真のS期時間と強い相関関係を示した。増殖抑制の見られた腫瘍では、アポトーシス、ネクローシスの両者が観察され、軟部肉腫における抗癌剤の作用機序は両者を誘発することが確認された。今後、多剤耐性遺伝子との関係、細胞周期との関係について検討予定である。
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