研究概要 |
方法:ヒト軟部発生の悪性線維性組織球腫をヌードマウス背部皮下に移植し、各群15匹ずつ(30腫瘍)の4グループに分けた。第1群から第3群は抗癌剤投与群とし各薬剤を腹腔内に投与した。 実際の腫瘍増殖を腫瘍径により求めると同時に、各群のうち3匹ずつをそれぞれ研究第1、5、9、17、23日に、Brduおよびこれに類似のIrduを一定時間の間隔にて腹腔内投与した後に腫瘍組織を採取し、通常のパラフィン切片を作成した。これらの切片を免疫組織化学的にBrdu,Irduを染色し、Brdu陽性細胞、Irdu陽性細胞および両者が陽性の細胞をカウントし各種増殖パラメーターを求めた。また同様の標本を免疫組織化学的に、in situニックトランスレーションを用いてアポトーシス細胞の比率を求めた。さらに、多剤耐性遺伝子のマーカーであるP-glycoproteinの発現を計測し、得られた上記値との相関関係につき統計学的に処理し、検討した 結果:3種類の薬剤はコントロール群と比較して、体積から見た腫瘍増殖の抑制効果が得られた。抑制効果の順序はビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチンであり、体積より見た腫瘍縮小効果は実験第1日目に得られたtotal cell cycle timeと逆相関する事が判明した。その他の増殖マーカー,真のS期時間も抗癌剤投与後に変化が見られるが、実際の腫瘍抑制効果とは必ずしも一致しないことがわかった。 また、薬剤投与群では各薬剤にアポトーシスの発現が観察され,その時期は投与後9日目前後にその最高値を示し、またその値は高々15%程度であった。多剤耐性を表すP-glycoproteinの発現は本実験系で観察されたが、その比率はわずかであり、また薬剤投与前後で大きな差は認められず、本腫瘍は多剤耐性ではなく,また薬剤による多剤耐性化が誘導されていないことが判明した。
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