人工腱鞘の生体への再移植を行う場合、癒着モデルを作成する必要がある。今回われわれが用いようと計画しているのは、ウサギのアキレス腱の外側線維束を切断し、腱周囲膜(腱鞘)と縫合して腱組織との癒着を生じさせるモデルである。われわれは、このモデルにおいて術後短期間で腱組織周囲に癒着が生じることを確認した。今後は癒着の発生過程について、組織学的に検討を加え、可能であればgrading systemを考察したい。また癒着の発生機序を解明すべく免疫学的手法を用いて検討を加えていく予定である。 また、腱鞘由来の滑膜細胞を担体とともに移植すべく、滑膜細胞を培養している。しかし、線維芽細胞のcontaminationが高頻度で生じることと、培養滑膜細胞の成長が緩徐であることが充分な培養滑膜細胞を得ることの障害となっており、培地の種類の選定や血清濃度の選択など培養条件を見直す必要があると考えられる。 さらに、癒着を防止する目的で培養滑膜細胞の担体として様々なものを考えているが、臨床応用が可能なものとしてはコラーゲンを基質とした担体が有用と考えられ、コラーゲン基質上での滑膜細胞の培養を計画している。しかし、充分な細胞数の滑膜細胞を得ることが必要不可欠であり、滑膜細胞の培養方法の確立が重要であると考えられる。 今後は癒着発生の機序を考慮し、その過程で出現するchemical factorなどを滑膜細胞の培養に用いたり、癒着を防止する目的でchemical factorに対する抗体を用いることを考慮している。
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