研究概要 |
変形性関節症(OA)は関節軟骨が破壊され、重篤な関節機能の障害をきたす疾患であるが、今だにその原因については不明であり根本的治療法も確立されていない。本研究では、軟骨の修復因子の1つであるIGFと密接に関連しているIGF-BPに注目し、OA軟骨において、これらの産生がどのように調節されているかを研究し、OAの成因および進展の機構を究明しようとするものである。 我々は、すでにラットの関節軟骨におけるIGFBPの発現の調節機構を研究し、軟骨細胞の産生するIGFBPが、IGFにより蛋白だけでなく、遺伝子レベルでも調節されていることを報告した。そこで今回はヒトの軟骨細胞の産生するIGFBPを分析するために、ヒト軟骨細胞の株細胞を培養し、産生されるIGFBPを10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動をおこない、Western-ligand b1otting法で分離した。また各種抗体を用いて免疫沈降反応を施行しその種類を蛋白レベルで同定した。その結果、ヒト軟骨細胞はIGFBP-2,-3,-4,-5を産生することがわかった。また、培養液中にIGF-Iを投与するとIGFBP-5が増加しラットの軟骨とよく似た反応を示した。また細胞層よりt-RNAを抽出しNorthern-b1ottingを行ない、各IGFBPに対するcDNAを用いて遺伝子レベルでの発現を調べ同様な結果を得た。 今後はこれらの基礎データーをもとに変形性関節症など病的軟骨のIGFBP産生の調整機序をみていく予定である。
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