研究概要 |
変形性関節症(OA)は関節軟骨が破壊され、重篤な関節機能の障害をきたす疾患であるが、いまだにその原因については不明であり根本的治療法も確立されていない。本研究では、軟骨の修復因子の1つであるインシュリン様成長因子(IGF)と密接に関連しているIGF結合蛋白(IGFBP)に注目し、OA軟骨において、これらの産生がどのように調節されているかを研究することにより、OAの成因および進展の機構を究明しようとした。ヒト軟骨細胞の株細胞を培養し産生されるIGFBPを、Western-ligand blotting法で分離した。培養液中には、IGFBP-2,-3,-4,-5の存在が確認された。また細胞膜に結合したIGFBPを、affinity cross-linking法で調べたところ、IGFBP-3および-5のと思われるバンドがみられ、同時にタイプ1およびタイプ2レセプターの存在も証明できた。このことはヒト軟骨細胞においてIGFがオウトクライン/パラクライン的に作用することを示唆するものである。また病的な関節炎のモデルをin vitroで想定するために培養液中にインタロイキン-1を添加して、コントロールとの変化をみたが、有意な変化を得ることはできなかった。しかし実際のOA患者の関節液中においては、明らかにIGF-Iは増加し、IGFBPのバターンも正常とは異なる事を確認しており、今後は実際に、手術で得たヒトOA関節軟骨を用いて、検索する予定である。
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