研究概要 |
近年,腰痛の発生メカニズムの検索が盛んに行われ.腰椎後縦靭帯の感覚神経支配に対しても組織学的手法や免疫組織化学的手法を用いた研究が報告されている.しかしながらその感覚神経支配についてはいまだ一定の見解が得られていない.今回われわれは後縦靭帯における疼痛発生メカニズム解明のため,ネコの後縦靭帯における感覚神経支配を電気生理学的手法を用いて分析した. 実験には,体重2.7〜3.4(平均3.1kg)の成熟したネコを使用した.気管カニューレを挿入し人工呼吸をおこない,動物を非動化した.腰椎を展開し,L2-L7の椎弓切除を行って,脊髄および後根を露出した.この後根をさらに細い線維に分割し,双極性記録電極にかけ,後縦靭帯からの求心性電位を記録することで,機械的感覚受容野を同定した.同定後,Semmes-Weinstein-Monofilamentを用いて機械的閾値を決定した.さらに受容野を電気的に刺激し,支配神経の伝導速度を測定した. 後縦靭帯に5個の機械的感覚受容器を同定した.そのうち2個は腰椎高位に認め,他の3個は椎間板高位に認めた.受容器の伝導速度は平均3.00m/sであった.機械的閾値は20.90g〜164.32g(平均80.30g)で5個の受容器全部が7.0g以上の高閾値受容器であった. 感覚神経線維はI〜IV群に分類され.このうちIII群およびIV群線維に支配され,7.0g以上の高い閾値を有する受容器は侵害受容器として機能する.一方7.0g以下の低い閾値を有する受容器は固有感覚受容器として機能する.今回,ネコの腰椎後縦靭帯に同定された受容器は侵害受容器がほとんどであった.本研究の結果から,腰椎後縦靭帯の受容器がinstabilityやstressに鋭敏に反応し,疼痛発生メカニズムに関与することが推測された.
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