研究概要 |
腰椎後縦靭帯に12個の機械的感覚受容器を同定した。同定された受容野の存在高位は、椎間板高位に3個、椎体高位近位1/3に8個、中央に1/3に1個同定され、遠位1/3には同定されなかった。機械的閾値は20.90g〜67.80g(平均45.40g)で、全ての受容器が7.0g以上の高閾値受容器であった。受容器を電気的に刺激し得られた誘発電位から得た支配神経線維の伝導速度は平均7.16m/sec.で、1個がIV群神経線維に属し、他の11個はIII群神経線維に属した。 III群およびIV群神経線維に支配され,7.0g以上の高い閾値を有する受容器は侵害受容器として機能するとされている。腰椎後縦靭帯に同定された受容器の全てが7.0g以上の高閾値受容器であった。また、伝導速度の計測ではIII群およびIV群神経線維に支配されていた。全てが侵害受容器と考えられ、腰椎後縦靭帯は、固有感覚受容の機能は乏しく、侵害受容に関与していると考えられた。同定された機械的感覚受容器12個のうち11個(91.7%)は、椎間板高位あるいは近位椎体高位、すなわち、椎間板の周囲に多くは同定された。変形性脊椎症、変性すべり症、椎間板ヘルニアなどの疾患において、椎間板周囲に機械的・化学的ストレスが発生すると考えられ、腰椎後縦靭帯は、これら各腰椎疾患により惹起されるストレスに反応し、腰痛発生メカニズムに関与することが推測された。また、これまでに同様の研究を腰椎椎間関節および椎間板について行ってきた。機械的閾値の平均値は、後縦靭帯は椎間関節と比べると大きな値であった。この結果、腰椎後縦靭帯は椎間関節と異なり、固有感覚受容の機能は乏しいと考えられた。
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