平成9年度は微小赤外線マーカーの試作から開始し、真円性が優れ反射能の高いマーカーが解析に有利であることを確認、手指マーカーの位置・個数等を決定して正常人の手の巧緻動作を解析した。 平成10年度は動作解析の対象を頸髄症と肘部管症候群の患者にまで拡大し、各々の疾患で物を摘まむ動作が正常とどう異なるかを検討した。また昨年行った正常人の動作解析データから、手の基本動作の評価基準の試案を作成した。 平成11年度はこれまで行った頸髄症および肘部管症候群患者の動作解析データを元に手指巧緻動作の評価基準を作成し、各疾患の手の動作評価を行った。 成果発表では、正常人の動作解析結果を平成10年8月に札幌で開催された世界バイオメカニクス会議にて、また頸髄症患者の解析結果を平成10年10月に浜松で開催された日米加欧整形外科基礎学会で発表した。同年、ピアニストの障害に関する動作解析研究を盛り込んだ著書「ピアニストの手」を刊行し、本動作解析研究の将来性についても触れた。 平成11年4月には肘部管症候群に関する評価と術後成績の比較検討を日本整形外科学術集会で発表すると同時に、日本手の外科学会誌に投稿した。本論文では新たに作成した臨床評価基準による評価点数と、King変法手術の術後成績、患者の満足度、尺骨神経の運動神経伝導速度との相関関係を調査し、いずれも有意な結果を得た。この結果、本研究に基づく手指巧緻動作の評価基準は極めて有用であることが示唆された。
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