科学研究費にて開発したX線像解析法を用い、各種足部疾患の病態を解明した。これまで外反母趾に対して行ってきた二次元座標系を用いる荷重時足側面X線像解析法を用い、有痛性外脛骨の患者18例22足を解析した。無症候性外脛骨31例32足との比較で、有意に有痛性外脛骨では足縦アーチが低下していることがわかった。これまで外脛骨を持っている足では扁平足を合併しやすいといわれてきたが、疼痛発現と足縦アーチの低下が関連していることを初めて明らかにした。 二次元座標系を用いる荷重時足背底X線像解析法を発展させ、舟状楔状関節内側縁と踵立方関節外側縁を結ぶ線をy軸とし、両点の中点が原点となるように座標変換することにより、足部内転の評価を可能にした。原発性変形性リスフラン関節症15例23足を解析し、正常足との比較により第1〜5中足骨のすべてが内転していることを初めて明らかにした。 科学研究費にて開発した荷重時足部X線撮影と圧計測センサーシステムを併用した足底圧分析法を用い、本年度は足趾部における荷重分布を検討した。患者26例39足の検討では、外反母趾変形が増大すると母趾と第2趾にかかる荷重は増大し、第3〜5趾では減少することがわかった。中足骨骨頭との関係をみると、変形が著しくなると第2趾での荷重増加以上に第2中足骨骨頭では増加しているのに対して、第1中足骨骨頭での荷重増加量は母趾における増加と同等量であった。 外反母趾に対して第1中足骨骨切り術を行った例の追跡調査を続行中である。これまでの術前と調査時におけるX線像の比較では、骨切り部位が第1中足骨の遠位、近位にかかわらず第1中足骨骨頭は適切な位置に矯正されていた。さらに症例を集め、詳細に解析することにより理想的な手術矯正法を定量的に明らかする予定である。また、これらのデータをもとに現在開発中の外反母趾に対する手術シミュレーターの精度の向上を目指している。
|