研究概要 |
大脳あるいは脊髄刺激を刺激して末梢筋肉からのCMAP(compound muscle action potential,複合筋活動電位)を記録し、脊髄から記録したのMEP(motor evoked potential,運動誘発電位)と脊髄刺激脊髄記録によるSCEP (spinal cord evoked potential,脊髄誘発電位)さらに末梢神経刺激脊髄記録のSSEP(spinal somatosensory evoked potential,脊髄知覚誘発電位)を同時に記録した。大動脈クランプによる虚血性障害,並びに脊髄圧迫を加えCMAP,MEP.SCEP.SSEPの振幅の変化の関連を観察し,それらの変化と麻酔覚醒後の運動機能障害の関連について検討を行った。 大動脈血流遮断後CMAPは全ての症例において1-2分以内に消失した。この時点でMEPは全く影響を受けていなかった。CMAP消失直後に血流を回復した第1群,10分後に解放した第2群のネコは実験直後,一週間後には何ら神経症を呈していなかった。しかし,MEPが完全に消失した20分後に血流を回復した第3群は様々な程度の痙性麻痺を,40分後に解放した第4群は全て弛緩性麻痺を呈していた。 脊髄に対して3grの圧迫を加え維持した際にCMAPは10分後までに振幅が低下した。MEP,SCEP,SSEPは脊髄圧迫6-12gr,CMAPの振幅低下から15-45分遅れて振幅低下を示し,伝導性電位はほぼ同様の変化動態を示していた。CMAPの振幅消失時に除圧した1群,MEPが50%低下した時点で除圧した2群,MEPが消失するまで漸増圧迫を継続したのちに除圧した3群の実験直後,1週間後の神経症状を観察したところ1群の全例と2群の1例は正常であったが2群の4例と3群全例で運動麻痺が観察されていた。これらの結果からCMAPのみでは脊髄機能の的確な術中モニタリングは行い得ないが障害要因が加わった際の早期の指標として有用であると判断した。このCMAPの鋭敏性の機序については本年度の実験結果を踏まえ脊髄前角細胞と索路の電位を観察して血流の変化などを勘案しつつ平成10年度に行う予定であり機器の整備も行ったところである。
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