研究概要 |
術中脊髄機能モニタリングに際して脳あるいは脊髄に電気刺激を加えて運動関連索路を下行するインパルスを脊髄前角細胞に送り,発火させることにより末梢の筋から複合活動電位(CMAP compound muscle action potential)を記録することが出来る。この電位は脊髄に加えられる圧迫に鋭敏に反応して振幅を減じるが,電位の振幅の変化が直ちに脊髄内運動路の障害を意味しないこと,運動路の障害は索路の伝導性を示す電位が50%前後に減少する程度の圧迫により固定化されることは昨年度の研究結果から明らかとなった。今年度はこのCMAPの鋭敏な反応がどの様な機序によって生じるのかを追求することを目的として研究を行った。本来は脊髄前角細胞内に微小電極を挿入してEPSP(excitatory post synaptic potential)を記録しつつ脊髄に圧迫を加えることを計画したが,微小電極先端の位置を保持しつつ脊髄に圧迫を加えることが極めて困難であり技術的な完成度全うさせることが出来ず,当初の計画を達成出来ないままに年度末を迎えたことを反省している。しかし,細胞外電位を脊髄に電気刺激を加えつつ記録して,その電位を脊髄の連発刺激の効果の確認に利用した。すなわち連発刺激によりEPSPの加重が起こることを観察することが出来た。他方,CMAPは脊髄虚血に鋭敏に反応して振幅を減じることから,脊髄圧迫により脊髄の血流が変化することが原因となっているのではと考えドップラー血流計にて脊髄表面血流の変化を観察したがCMAPの変動と関連した明らかな変化は観察することが出来なかった。引き続き髄内の血流の変化に着目した血流の変化を運動細胞内あるいは外電位と比較する実験的研究を続行する計画である。
|