ラットを実験モデルとして、ドナーの後脛骨神経をレシピエントの坐骨神経に移植した.移植動物系の組み合わせは、allograftはACIラットからLewisラットに、isograftはLewisラットからLewisに移植した.Allograftは、モノクローナル抗体(抗ICAM-1抗体+抗LFA-1抗体)を12日間投与した群と、無処置群の2群を作製した.ここで用いた抗体は、ヌードマウスの腹腔にハイブリドーマ細胞を注射することによって生じた腹水から採取し、精製には透析法を用いた.組織学的評価は、移植後8週で免疫反応の様子を観察するとともに、コンピューターの画像解析ソフトを用いて再生神経の形態学的検索も行った. 移植後8週でのallograft群には、著しいリンパ球の浸潤や神経構造の破壊が観察され、強い拒絶反応が生じていた。いっぽう抗体を投与したallograft群では、リンパ球の浸潤が少なく神経構造は良好に維持され、移植した他家神経に対する免疫反応は抑制されていた。形態組織学的検索では、抗体投与allograft群は、統計学的に明らかに無処置allograft群より多くの再生神経を誘導しており、その値はisograft群に匹敵するものであった。さらにパーセント神経率、神経線維密度においても同様の解析結果が得られた。以上の結果より、モノクローナル抗体を用いて細胞接着分子であるICAM-1とLFA-1のリガンドペア-をブロックすることで、他家移植組織に対する免疫抑制効果が得られることが判明した.また、抗体投与期間が12日間であるにもかかわらず、8週間という長期に拒絶反応が抑制されていたことから、免疫機構の再構築が行われた可能性が示唆された.
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