研究概要 |
ラットの後脛骨神経を坐骨神経に移植した(移植動物系の組み合わせは、allograftはACIラットからLewisラットに、isograftはLewisラットからLewisに).Allograftは、抗ICAM-1抗体と抗LFA-1抗体を12日間投与した群と、無処置群を作製した.移植後16週で免疫反応の様子を組織学的に観察するとともに、コンピューターの画像解析ソフトを用いて再生神経の形態学的検索を行った.さらに,手術直後より2週問おきに歩行解析を施行し、歩行機能の回復についても比較検討した.一方Wistarラットの坐骨神経を、プログラムフリーザーを用いて冷却し、これを液体窒素の中に1週間保存後解凍して、神経組織の微細構造を観察した. 移植後16週の無処置allograft群には、神経構造の著しい破壊像が観察され、強い拒絶反応が生じていたが、抗体投与allograft群では、神経構造は良好に維持され、移植した他家神経に対する免疫反応は抑制されていた.形態的検索では、抗体投与allograft群は、統計学的に明らかに無処置allgraft群より多くの再生神経を誘導しており、その値はisograft群に匹敵していた.Walking trackを用いた歩行解析でも、抗体投与群ではisograft群と同等の機能回復が観察された.以上より、抗体を用いて細胞接着分子であるICAM-1とLFA-1のリガンドペアーをブロックすることで、他家移植組織に対する免疫抑制効果が得られることが判明した.また、プログラムフリーザーを用いた保存神経は、神経周膜構造の破壊もなく、軸索構造も良好に維持されていた.この結果から、単細胞に比較して困難とされる組織の長期保存の可能性が示された.
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