椎間の可動性を犠牲とする椎間固定術にかわり、その椎間板の変性過程を時間的に遅らせる方法としての髄核再挿入術を考案し、実験動物モデルにおいて、それが可能であることを示してきた。wistar系ラット40匹と日本白色家兎20羽に作成された今回の椎間板変性モデルでは、同一個体での長期間の経過観察においても、非再挿入群ではその変性変化進行は著明であった。一方、髄核の再挿入群では、その変性進行を時間的に遅らす効果が持続することが示された。変性椎間板の線維輪内層部におけるchondrocyte様細胞の出現の意義に関しては、椎間板変性の作成法や実験動物種によって異なった見解が示されている。慢性の椎間板変性過程をよく示しているこのモデルにおいて、線維輪内層に出現するchondrocyte様細胞は、髄核を再挿入しない変性進行椎間板に多くみられ、その出現後に、椎間板全体の変性がさらに進行することが特徴である。すなわち、chondrocyte様細胞の出現が変性に対するregenerative reactionとする他家の報告とは、全く異なっている。細胞の合理的な死と考えられるアポトーシスが、線維輪内層部にみられたのは、髄核を再挿入した軽度変性椎間板切片であり、著明な進行椎間板では線維輪内層細胞にアポトーシスは認められなかった。すなわち、線維輪内層のchondrocyte様細胞の出現は、regenerative processではなく、また出現したこの細胞がアポトーシスによって処理されていく過程が、椎間板全体の変性変化が時間的に遅延される過程と相関する可能性が考えられた。また、椎間板変性過程におけるII型collagenの線維輪内層での出現は、椎間板変性の進行と相関し、光顕所見におけるchondrocyte様細胞の出現とも相関していた。従って、II型collagenの椎間板線維輪内層部での分布の大小が、各個体における椎間板変性度の重要な指標の一つになると考えられる。
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