研究課題/領域番号 |
09671522
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
藤井 克之 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10112856)
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研究分担者 |
丸毛 啓史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70199925)
蔡 詩岳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教授 (80183359)
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キーワード | 慢性関節リウマチ / 軟骨組織 / 軟骨下骨髄組織 / in situ hybridization / c-fos |
研究概要 |
本研究では、OAおよびRAの関節軟骨・軟骨下骨髄組織を免疫組織学的に観察し、関節破壊の発症のメカニズムの差異について検討した。 RAならびに変形性関節症患者(OA)の手術時に採取した軟骨・軟骨下組織におけるc-fosの発現について、手術時に採取した硬組織のパラフィン包埋切片を作成し、小路らの方法に準じたc-fosのチミンニ量体標識プローブによるin situ hybridization法を用いて検討した。RAの関節軟骨細胞ではc-fosの発現が認められ、これらの細胞では軟骨基質の主要な分解酵素であるMMP-1およびMMP-3による染色性が増強していたが、そのインヒビターの1つであるTIMP-1による染色性はわずかに観察されるにすぎなかった。さらに、こうした変化を示す軟骨層の直下の骨髄には、c-fos発現陽性の細胞成分の増加が観察された。これに対して、OA患者の関節軟骨では、その表層部分の軟骨細胞にMMP-1,MMP-3およびTIMP-1による染色性が観察されるものの、c-fosの発現はほとんどの症例で認められなかった。以上の結果をまとめると、OA患者ではその2%の表層軟骨細胞にわずかなc-fosの発現を見るにすぎないのに対して、RA患者ではその73%において軟骨組織全層の軟骨細胞にc-fosの発現が観察されることがわかった。このことから、RA関節の軟骨組織ではc-fosの発現が増加することにより、そのマトリックス代謝の恒常性が破綻し関節破壊が進行するものと考えられた。 以上の結果からRA患者では、II型コラーゲンに対する抗体が産生されており、この自己免疫応答の発現には、関節軟骨と軟骨下骨髄組織の細胞との間に生じる相互作用が起因となっている可能性のあること、また、ヒトRAの関節軟骨においてはc-fosが過剰発現しており、本遺伝子が、軟骨組織内の軟骨マトリックスの合成を抑制するのみならず、分解酵素とのそのインヒビターとの不均衡をもたらすことによりRAの関節破壊の進行に重要な役割を演ずることが見い出され、同部におけるc-fosの発現を抑制することがRAの骨・軟骨破壊の治療につながる可能性が示唆された。
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