研究概要 |
"Programmed cell death"はアポトーシスの過程によって起り、Fas抗原は細胞の膜表面に広く分布されている膜表面抗原でTNF-αのスパーファミリーに属し広い範囲の細胞にプログラム細胞死であるアポトーシスを誘導する事が出来る分子である。近年、ある種の腫瘍細胞でFas抗原を介したアポトーシスを誘導する事が出来るとの報告がありそのメカニズムが急速に解明されようとしている。 そこで本研究では悪性骨軟部腫瘍に於てin vivo,in vitroのFas抗原の存在を確認しするとともにアポトーシスを誘導しその作用機序について検討した。腫瘍細胞にFas抗原が存在するならその増殖に於てFas抗原を介したアポトーシスに何らかの機序を介して抵抗していることが考えられる。本研究では悪性骨軟部腫瘍の増殖過程においてFas抗原を介したアポトーシスへの抵抗の機序を解明しその機序を除外することによってアポトーシスの誘導が可能になるとの推論に立脚している。実験として骨肉腫細胞株14株と骨巨細胞腫4株を用いた。また4例ずつの外科切除標本の検索では、TUNEL法で陽性細胞を多数に認め、電顕ではapoptotic bodyを認め、DNA ladderを示した。これらから腫瘍組織中では実際にアポトーシスの現象が起きていることが証明された。一方、培養骨肉腫の9株と骨巨細胞腫4株でFas抗原が検出できた。そこで抗Fas抗体を添加してアポトーシスの導入を図ったが、成功しなかった。可溶性Fasが存在することが判明したが、この量は微量であった。蛋白合成阻害剤cyclohexamideの添加で形態、生化学的にアポトーシスを導入できたことを証明できた。Cyclohexamideがアポトーシス関連細胞内情報伝達機構を促進している可能性があるのではないかと考えている。
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