研究概要 |
変形性膝関節症は整形外科領域では最も頻度の高い疾患の一つであるが、その病因については未だに不明で有効な予防法もないのが現状である。我々は数年前より膝関節の歩行時における側方動揺性に注目し、正常および関節症膝の動揺性を加速度解析で評価する試みを行ってきた。その結果、膝の側方動揺性には3つのパターンがあり、種々の歩行条件によって動揺性が大きく影響を受けることが判明した。また保存療法として用いられている足底板の作用機序については、側方動揺性の制動が大きく関与していることを明らかに出来、加速度解析法は、膝関節症の病態の解明と治療法の開発に有用な研究手段であることが示された。 本研究の目的は、これまでに確立した二次元の加速度解析をさらに三次元にまで発展させ、変形性膝関節症の生体力学的異常を静的のみでなく動的手法により解析し、本疾患の病態を明かにするとともに、関節症の進展を予防する方法、および進展した関節症に対する適切な治療法を開発することにある。 1) 加速度解析法と足底圧解析法を用いて、足底板の力学的効果について検討し、足底板療法により除痛効果が得られた有効例の歩行と除痛効果が得られなかった無効例の歩行とを比較し、足底板の影響の差異について検討した。足底板による外側動揺性の制動効果が大きい例や足底圧重心線の外側移動効果が大きい例では、足底板が非常に有用であることが明らかにされた。しかし、臥位のレントゲン像において、膝関節開き角が大きく、膝内側関節裂隙の狭小化が認められる症例や肥満の症例では、足底板療法に限界があることが示唆された。至適足底板は、前後方外側楔および前後方外側楔+内側アーチサポートで沈み込まない硬い素材のものと考えられた。 2) 変形性膝関節症(OA)に対するヒアルロン酸ナトリウムの臨床効果に関して、種々の薬理学的作用に加えて、潤滑機能を改善させることがあげられている。そこで我々は変形性膝関節症患者に対し、膝関節を屈伸する際に発する関節音に着目し、その周波数分析を行うことによりヒアルロン酸ナトリウムの効果を関節音で評価した。末期OA膝25例に対しHA注入前後の関節音を測定し、周波数分析を行った。その結果、注入前は426.9±141.1Hz,注入直後は283.2±86.5Hzであり、有意に周波数の低下を認めた。
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