研究概要 |
右半球損傷後に起る半側空間無視は,左側の対象に気付かず,また左側を探そうとしないという症状を呈する.本研究は,液晶ディスプレイとタッチパネル用いて,1)従来の検査方法に準じて反応過程を含む半側空間無視の定量的評価を行うこと,2)刺激を動的に変化させ,反応過程も記録しながら訓練を行うこと,を目的としたシステムの開発を目指している.本年度は,まず,評価システムと訓練プログラムに用いるべき適切な課題を選択するために,紙と鉛筆を用いた方法の再検討を行った.線分二等分試験では,半側空間無視患者は線分の右寄りに印を付けるが,あらかじめ印を付けた線分については左右の長さ正しく比較できることを明らかとした.また,二等分において,上肢の運動を用いた場合と用いない場合で,無視の程度に大きな相違がないことを示した.一方,注意を引く刺激が右側にあると無視が増悪し,右側の刺激を取り去ると容易に左側を向けることを明らかとした.これらの結果に基づき,(1)線分二等分試験,(2)左端cueing後の線分二等分試験,(3)線分に印を付ける抹消試験,(4)触れた線分を実際に消去する抹消試験,(5)選択的抹消試験の1つであるStar Cancellation Test,(6)線分を右端から左端までなぞる課題,(7)線分を右端から左端まで消去する課題について,液晶ディスプレイとタッチパネルを用いたパーソナルコンピューターシステムに移植することとした。液晶画面は,紙と鉛筆の課題に近づけるために白地に黒の表示を主体とし,ソフトウェアは使い勝手を考えてWindows95上のVisualCとした.ソフトウェア開発においては,タッチパネルの追従速度と反応性を重視した.現在,本システム上で,上記課題を問題なく遂行できる状態に到達し,主に健常人を対象として,操作性と従来の方法との対応状況の確認を行っている.
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