研究概要 |
右半球損傷後に起る半側空間無視は,左側の対象に気付かず,また左側を探そうとしないという症状を呈する.本研究は,液晶ディスプレイとタッチパネル用いて,1)従来の検査方法に準じて反応過程を含む半側空間無視の定量的評価を行うこと,2)刺激を動的に変化させ,反応過程も記録しながら訓練を行うこと,を目的としたシステムの開発を目指している.本年度は,Windows95上のVisual Cにより,予定していた以下のソフトウェアの完成をみた.すなわち,(1)線分二等分試験,(2)左端cueing後の線分二等分試験,(3)線分に印を付ける抹消試験,(4)触れた線分を実際に消去する抹消試験,(5)選択的抹消試験の1つであるStar Cancellation Test,(5)線分を右端から左端までなぞる課題,(7)線分を右端から左端まで消去する課題である.(1)と(2)の線分二等分試験については,すでに約20例の半側空間無視患者に対して施行した.その結果,長さの異なる線分を用いて,合計90回の二等分を実施しても所要時間は15分程度であり,検査時間の大幅な短縮が得られた.また,二等分点の偏位量はlmm単位の精度で測定可能であり,データの統計解析も容易となり,検査の評価が短時間かつ正確に行える点で実用性が高いことが証明された.訓練効果としては,(2)では,左端に正確に触れるとアラーム音が鳴るようになっており,その後に二等分を行うために成績向上が見られた.さらに,これを繰り返すことにより左方探索の出現頻度が向上した.(6)と(7)の線分を左端までなぞる,または消す課題は,重度の半側空間無視患者における左端の認知および左方探索の訓練に有効であった.いずれの課題でも,結果をディスプレイ上で再現可能であり,患者に対する検査結果の説明とフィードバックに有用であった.なお,抹消課題(3)〜(5)については,タッチパネルの反応性にやや遅れが見られるため,ソフトウェアの改修を急いでいる.
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