睡眠は単なる休息ではなく、特に中枢神経系の回復にとって欠かせないものである。また睡眠は免疫系とも深く関わっており、免疫系の中心を担っているサイトカインのなかでインターロイキン1と腫瘍壊死因子が睡眠調節作用を有することは我々の研究によって詳細に検討されてきた。これらのことから中枢神経系と免疫系は密接に関係していることが解ってきた。一方、麻酔・手術後にレム睡眠の減少に代表される睡眠障害が生じることはこれまで報告されてきたが、そのメカニズムや意義、さらには解決法については殆ど研究されていなかった。そこで本研究はこれらの問題点の解明を目的として行われている。本研究期間初年度である平成9年度では、まず睡眠測定システムを確立してウサギの睡眠測定を行った。すなわち一定の温度と静寂な環境を作り出すことのできるエンバイロメンタルチャンバーの中に動物を置き、比較的拘束の少ない状態で連続的に脳波、筋電及び脳温を測定することによって睡眠を測定した。さらに現在臨床で広く使用されている静脈麻酔薬ケタミンのウサギ睡眠に及ぼす影響を研究した。その結果ケタミンは睡眠量、とくにノンレム睡眠を増やし、同時にその睡眠の深さも増すことがわかった。しかもその作用はケタミン投与後3日にわたり続いた。以上のことから、一般に減少するといわれている手術後の睡眠変化にたいしてケタミンは桔抗する可能性があることが示唆され、次年度以降の研究でさらに明らかにしていきたい。
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