研究概要 |
睡眠は単なる休息ではなく、とくに中枢神経系の回復にとって欠かせないものである。また睡眠は免疫系とも深く関わっており,免疫系の中心を担っているサイトカインは睡眠調節作用を有している。 これらのことから中枢神経系と免疫系は密接に関係していることが解ってきた。一方、麻酔・手術後にレム睡眠の減少に代表される睡眠障害が生じることはこれまで報告されてきたが、そのメカニズムや意義、さらには解決法については殆ど研究されていなかった。そこで本研究はこれらの問題点の解明を目的として行われている。本研究においてわれわれは静脈麻酔薬ケタミンがウサギの睡眠量を増やすことを見出した。ケタミンはとくにノンレム睡眠を増やし、またその時の睡眠の探さも増すことがわかったがこの作用はケタミン投与後3日にわたって続いた。一方吸入麻酔薬のイソフルレンは睡眠量を減少させ、手術後の睡眠障害の一因になっている可能性が示唆された。さらに手術侵襲の睡眠障害のメカニズムを検討する目的でインターロイキン-1と腫瘍壊死因子の睡眠調節作用を検討したが、脳内に存在するこの二つのサイトカインが密接に関係しあって睡眠を調節していることが解明され、手術後睡眠障害のメカニズムにサイトカインが深く関係していることが考えられた。以上のことから,一般に減少するといわれている手術後の睡眠障害に対してケタミンを用いることが有効な方法ではないかと考えられ、今後臨床の場で確認していきたいと考えている。
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