人工換気中に換気および肺胞内圧の不均等分布が存在するといわれている。実際に臨床で肺胞内圧をdynamicな状態で測定し、肺胞内圧の分布が均一となるような吸気パターンを選択することは現時点では困難である。そこで、正常肺モデルにおいて、自発呼吸にpressure support ventilation(以下PSV)を加え、設定されたサポート圧へ立ち上がるまでの時間を0.1、0.25、0.5、0.75秒と変化させ、肺の各区域の肺胞内圧を直接dynamicな状態で同時測定し、どのようなPSVの吸気パターンが各肺区域間の肺胞内圧の圧較差を最小にとどめ、肺胞内圧の不均等分布を最も均一化するかを検討した。続いて、interleukin-1とtumor necrosis factorを静脈内持続投与し、敗血症性肺水腫モデルを作成して同様の検討を試みた。 正常肺モデルでは、サポート圧までの立ち上がり時間が遅いほど、肺胞内圧の吸気初期の陰圧が大きかった。吸気終末肺胞内圧は、nondependent zone、dependent zoneともに、立ち上がり時間0.5秒で最も高い傾向を示した。nondependent zone、dependent zone間の吸気終末肺胞内圧較差はほとんどなく、各立ち上がり時間の間で差がなかった。敗血症性肺水腫モデルでは、肺胞からの分泌物が増加したため、肺胞カプセル法による肺胞内圧の測定が非常に困難であった。 サポート圧までの立ち上がり時間を適切に設定することにより、正常肺モデルでの肺胞への圧の伝搬が改善された。さらに、本研究では解明できなかったが、敗血症性肺水腫モデルでは肺胞内圧の不均等分布がより大きくなるため、立ち上がり時間の適切な設定により、肺胞内圧の圧較差を軽減できる可能性が推測される。今後、敗血症性肺水腫時の肺胞内圧の測定方法を改良するなど、さらなる検討が必要と考えられた。
|