横隔膜運動を超音波エコーにより計測した。超音波エコープローベは右は、鎖骨中線季肋部または鎖骨中線第6肋間、中腋窩線上でなるべく横隔膜を捉えられる範囲で尾側の位置、左も右側同様に中腋窩線上でなるぺく横隔膜を捉えられる範囲で尾側の位置とした。ICUでは持続鎮静が行われる。持続鎮静下の横隔膜運動を検討するために健常者にてこの研究を行った。鎮静薬はPropofol単独またはケタミンとミダゾラムを混合した物(以下KM)とした。Propofolは1.5ml/kg bolus投与を行った後2ml/kg/hrで維持した。KMはケタミンとミダゾラムをそれぞれ0.5、0.05mg/kg bolus投与した後、それぞれ1.0、0.1mg/kgで維持した。測定は鎮静開始1時間後に行った。その結果、鎮静により吸気開始に関与する胸部運動は顕著に抑制され、腹部吸気運動もやや抑制された。横隔膜運動はPropofolでやや抑制がかかったが、KMでは鎮静薬無しよりも早いタイミングで横隔膜は吸気運動を開始していることが分かった。これは、Propofolでは胸部・腹部・横隔膜運動全てが抑制をうけるが、KMでは鎮静薬によりいわゆる胸式呼吸が強く抑制されたためと考えられた。Propofolにより横隔膜移行距離は抑制されたがKMでは抑制されなかった。しかし、胸部・腹部呼吸運動は両鎮静薬共に抑制した。Propofolでは横隔膜平均吸気速度(横隔膜移動距離を吸気時横隔膜運動時間で除したもの)はやや抑制されたが、KMでは全く抑制を受けなかった。以上から、Propofolは、鎮静薬無し時の呼吸を全体的に抑制するため鎮静薬無し時の呼吸pattern同様の呼吸となるが、KMは横隔膜運動は抑制しにくいが、胸部・腹部呼吸運動を抑制するため、鎮静薬無しの呼吸patternとは異なる呼吸になる可能性が示唆された。
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