研究概要 |
本年(平成9年)度は経頭蓋骨脳血流モニター(TCD)を作成することから開始した。研究代表者がオックスフォード大学で使用していたものと同等品を、コンピューター,デジタルアナログ変換機は現有のものを流用し,オ-ディオ用ぷリメインアンプ,スピーカー、ドップラー波採取ピックアップなどは新規購入して組立作成した。TCDシステム構築後,健常成人を対象に肺胞気内炭酸ガスのステップ変化の脳血流に対する影響を検討する研究を始めた。測定するものはTCDによる中大脳動脈血流速と相対的な血管断面積である反射拍動ドップラー波のパワーであり,血流速とドップラー波の席画測定動脈の相対的な血流量(CBF)となる。測定手順は以下のとおりである。被検者はフェースマスクを通して70%酸素+30窒素混合ガスを吸入しその側孔より呼吸ガス濃度測定のためのガスを採取する。被検者は軽度の過換気で自発呼吸し、呼気終末炭酸ガス分圧(PETCO_2)が28mmHg前後となるようにコントロールする。すべての測定項目が安定した状態で5分間測定を継続したのち,自発呼吸の過換気状態は固定したままで,PETCO_2を47mmHg前後(軽度低換気)になるように数呼吸以内にステップ様に上昇させそのPETCO_2を15分間維持する。15分後同様にステップ状にPETCO_2を28mmHg前後まで低下させ15分間そのPETCO_2を保ち測定終了する。ついで70%笑気+30%酸素吸入させ,同様の過換気-低換気-過換気時の測定を行った。 この結果低濃度笑気は、1)ベースラインの脳血流量を増加させるが、2)炭酸ガス負荷に対する脳血管のダイナミック応答には影響しないことが判明した。今後この結果に数理モデルを当てはめ、上記結果の定量化を行う予定である。なおこの結果は、第45回日本麻酔学会総会(1998年4月、鹿児島)において発表する予定である。
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