研究概要 |
ニホンシロウサギを静脈麻酔下に、人工呼吸の上、オレイン酸肺障害モデルを作成した。 I群:通常の陽圧換気のみ、II群:気道内にPerflubron(PFOB)15ml/kgを注入し、通常の陽圧換気を施行(Partial liquid ventilation:PVL)、III群:PLV下にPGE(0.1μg/kg/min)を経気道的に投与、IV群:PLV下にプロスタサイクリン(50ng/kg/min)を経気道的に投与、V群:通常の陽圧換気下に一酸化窒素を吸入、VI群:PLV下に一酸化窒素を吸入、の6群に分けて検討中である。今年度は、I,II,III,V,VI群についてデータをとった。オレイン酸肺障害においては低酸素血症(純酸素下でPa02 600mmHgから約70mmHgに低下)ならびに肺高血圧(平均肺動脈圧で13から24mmHgに上昇)が著明となり、通常の陽圧換気ではこれらを改善することはできなかった。このような病態に対し、PLVは酸素化能を軽度改善させた(Pa02 180mmHg程度)。一方、PGE1を経気道的に投与すると酸素化能の改善がより顕著となり(280mmHg程度まで改善)、肺動脈圧も低下し(平均肺動脈圧で16mmHgまで低下)、循環系にも好ましい影響を与えることが判明した(Anesthesiologyに掲載決定)。また一酸化窒素を吸入させた場合もPLVに併用した場合のほうが酸素化能や肺高血圧の改善が良好であることが示された(Chestに掲載決定)。両者の結果から、PLV時に血管拡張薬を経気道的に投与することは、肺高血圧と著しい低酸素血症を伴った重篤な急性呼吸不全の治療に有効である可能性が示唆された。
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