研究概要 |
【目的】全身性炎症反応症候群(SIRS)におけるエンドセリン(ET)-1と臓器障害との関連、特に敗血症性ショック時の全身、肺、腎の血行動態とET-1の関連を解明することを目的とした。【対象と方法】雄イヌをバルビタールにて麻酔し、気管内挿管後人工呼吸を施行した。大腿静脈よりCVPカテーテルを挿入し、ラクテックリンゲル液(10ml/kg/hr)を輸液した。大腿動脈にカテーテルを挿入し、動脈圧の測定と動脈血の採血を行った。頚静脈よりSwan‐Ganzカテーテルを肺動脈まで挿入した。開腹後左腎動脈を剥離して、腎動脈血流測定用の電磁血流計を装着した。尿量測定のために膀胱にカテーテルを挿入した。測定項目は、(1)血行動態(HR,MAP,MPAP,WP,CVP,CI,SVRI,PVRI)、(2)血液ガス(a/v)、(3)酸素運搬量(DO_2I)、酸素摂取量(VO_2I)(4)血中ET-1濃度、(5)呼吸パラメーター、(6)腎機能(Ccr,UV,FENa,Uosm)で薬剤投与前、投与後0.5,1,2,3,4hrで測定した。イヌは、1)エンドトキシン投与群:lipopoplysaccharide(LPS,250ng/kg/min)2hr i.v.2)ET_A/ET_B受容体桔抗薬+エンドトキシン投与群:(TAK-044,1mg/kg)i.v.後0.5hrでLPS(250ng/kg/min)2hr i.v.の2群に分類した。【結果】LPS投与後、血中ET-1濃度は有意に上昇し、MAP,MPAP,WP,CVPと正の相関を示した。LPS投与により、低血圧、代謝性アシドーシス、低酵素血症、腎機能障害が発生した。ET受容体桔抗薬であるTAK-044は、LPS-誘導性の代謝性アシドーシス、低酵素血症、腎機能障害を改善したが、低血圧は阻止できなかった。【考察及び結論】LPS投与により、血中ET-1濃度が上昇したが、これはLPSによる血管拡張に対する代償的なメカニズムと考えられる。敗血症性ショック時に、ET-1は全身の血管を収縮させ血圧を維持しようと働くが、腎や肺循環に対しては血管収縮による臓器血流減少を引き起こす可能性があることが示唆された。
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