研究概要 |
低酸素吸入によって生じる肺血管収縮の機序を解明するため以下の実験を行った。 1. ラットをpentobarbital麻酔下で気管切開し、人工呼吸下で胸骨正中切開、心膜切開し、肺動脈にcannulation,また大動脈より左心室にcannulationし、perisaltic pumpによる肺動脈送血、左心室脱血の体外循環を行った(以下ラット分離肺潅流モデル)。潅流液はautologus bloodを30mmolHEPES buffer so1utionで希釈し、bovine serum albumin(BSA)3g/dlを加え膠質浸透圧を得、Hb5g/dlに調整した液を用いた。潅流速度を0.1ml/g/minと一定に保ち、吸入酸素濃度を21%から0%に変化させた時の肺動脈圧の変化を観察し,低酸素性肺血管収縮,HPV,のため約50%の肺動脈圧の上昇を認めた。 2. 1の実験結果を踏まえ、吸入酸素濃度を段階的に変化させた時の本実験系におけるHPVの強さと吸入酸素濃度の関係を解明した。吸入酸素濃度10%以上ではHPV反応が生じないことが示された。 3. 次いで,パーフルブロン(1-Bromoheptadecafluorooctane)による液体換気時にHPVが生じるか否かを検索した。分離肺潅流モデルは1と同様のものを用い,人工呼吸をパーフルブロンによる部分液体換気とした。本実験においても吸入酸素濃度低下によるHPV反応が保持されることが観察された。 4. 部分液体換気実験において,バーフルブロンにリドカインを添加し0.25%に調整した液を用いるとHPV反応は生じなかった。この時,潅流液中にはリドカインは検出されず,肺血管の収縮性の障害がHPV反応の抑制機序ではないことが示され,気管・気管支の酸素受容機構が局所麻酔薬リドカインによって抑制されたことが示唆された。
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