平成9年4月から平成11年2月までに、16例の慢性疼痛患者に対し多目的硬膜外カテーテルを挿入し、硬膜外ブロックまたは硬膜外通電療法を施行した。疾患の内訳は、帯状疱疹後神経痛8例、腰部脊柱管狭窄症4例、反射性交換神経萎縮症1例、上肢切断後断端通1例、中心性頸髄損傷1例、多発性硬化症1例であった。サーモグラフィーで治療前後の皮膚温を測定した。帯状疱疹後神経痛症例8例のうち、硬膜外ブロックでは有効5例、やや有効2例、無効1例、硬膜外通電では有効2例、やや有効3例、無効3例で、硬膜外ブロックの方が高い効果を示した症例が5例だった。治療前に明かな皮膚温低下が認められたのは1例で、両治療とも皮膚温上昇と疼痛に対する有効性が認められた。腰部脊柱管狭窄症症例4例では、3例で患者下肢の皮膚温低下が認められ、硬膜外ブロック、通電ともに軽度の皮膚温上昇が認められたが、硬膜外ブロックは有効2例、やや有効2例、硬膜外通電は全例無効と、硬膜外ブロックの方が成績がよかった。下肢反射性交感神経萎縮症症例では、患者下肢の皮膚温低下を認め、硬膜外ブロック、硬膜外通電とも効果はやや有効であったが、硬膜外通電により皮膚温の上昇が認められた。上肢切断後断端痛患者は、患側上肢の皮膚温低下を認め、硬膜外ブロックの効果はやや有効、硬膜外通電は有効で、硬膜外通電はブロックより高い皮膚温上昇が得られた。中心性頸髄損傷症例は疼痛部位の皮膚温異常は認められず、硬膜外ブロックはやや有効、硬膜外通電は有効であった。多発性硬化症では、患側上肢の皮膚温低下が認められ、両治療により皮膚温上昇が認められたが、両者とも無効であった。症例数が少なく統計的解析には至らないが、疾患により、硬膜外ブロックと硬膜外通電による除痛効果と血流変化との相関関係が異なることが示唆された。
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