研究概要 |
術中・麻酔中の体温低下は我々麻酔科医が常日頃遭遇することである。その中でも麻酔導入時の中枢温の低下は特に著しい。その原因として中枢から末梢への熱の再分布が大きく影響している。さらに、手術中も熱産生、熱喪失のバランスが崩れることにより、中枢温は低下することが多い。その結果、手術後のシバリング(ふるえ)、虚血性心電図変化などの合併症が生じ得る。本研究では、麻酔導入前後および中枢温の変化が見られなくなる(プラトー)に至るまでに、降圧薬であるニカルジピンとプロスタンジンを持続投与(濃度をそれぞれ3段階とする)することにより、中枢温・末梢温(特に末梢血管収縮asoconstrictionの起こる時の中枢温:閾値温度)および熱の再分布に対してどのような影響を与えるかについての臨床的な検討を試みることを目的とする。 <プロトコール>:平成9年度 対象:上腹部手術(胃亜全摘、胃全摘) 1群:生理的食塩水を持続注入:コントロール(n=10)、2群:ニカルジピンを0.5μg/kg/min持続注入(n=10) 3群:ニカルジピンを2.0μg/kg/min持続注入(n=10) 麻酔方法 前投薬:なし、硬膜外麻酔中に輸液(500cc:室温)、硬膜外麻酔:T8/9またはT9/10 導入前;レペタン(0.004mg/kg、最大0.2mg,生食で計5ccとする)を注入 導入:Propofol 2mg/kg,Vecuronium 0.1-0.15mg/kg、維持:GOS(Sevo:1%) 輸液:8-10cc/kg/h(保温庫内のもの)、 室温:22〜23℃前後に保つ 測定項目(10分毎) 体温 中枢温:鼓膜温(左)、食道温 末梢温:皮膚温(7ヶ所) 胸部、上腕、前腕、示指(非点滴、非A-line、非血圧測定側) 大腿、下腿、拇指(非点滴、A-line側、非血圧測定側) 血圧(SBP,DBP)、心拍数、輸液量、出血量、尿量、E_tCO_2、E_tSevo 末梢血管収縮時(前腕一示指温度較差≧0℃)のニカルジピンの血中濃度測定 以上のプロトコールに基づいて研究を行っている。手術操作に対する麻酔の維持と末梢血管収縮を適切に得るために臨床的な工夫が必要となっている。更に検討を加える予定である。
|