手術侵襲・重傷膵炎・外傷・熱傷・ショック敗血症などの様々な侵襲に対して引き起こされる過剰な生体反応の背景には高サイトカイン血症が存在する。神経・免疫・内分泌の連関が一連のストレス反応の基礎に存在すると考えられるが、それを担う細胞の反応をレドックス(酸化・還元)の観点から捉え、そのうえで吸入・静脈麻酔薬がこのストレス応答をいかに修飾するかを細胞レベル・遺伝子レベルで明らかにすることが本研究の目的であった。 細胞内レドックス因子であるチオレドキシンの過剰発現が、炎症性サイトカインの産生に関わる転写因子NF-kBの活性を細胞質内においては負に、核内においては正に調節することを見いだした。また免疫応答に関わる重要な因子であるグルココルチコイドの核内受容体の転写をチオレドキシンが直接還元することにより正に制御されることを示した。さらにmitogen-activated protein kinase(MAPK)の活性化がチオレドキシンの細胞内過剰発現により負に制御されることを見いだした。 細胞内レドックス因子であるチオレドキシンの過剰発現が、炎症性サイトカインの産生に関わる転写因子NF-kBの活性を細胞質内においては負に、核内においては正に調節することを見いだした。またチオレドキシンの関連遺伝子産物であるグルタレドキシンのrecombinant proteinのsmall scale(mg order)の増産系を大腸菌で確立し現在抗体の作成に成功した。 これらの研究成果は、高サイトカイン血症を病態の基礎に持つ臨床上見られるさまざまな病態の機序の分子生物学的な理解を深めるとともに治療の糸口を与えるものである。
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