昨年度、急性の呼吸筋疲労(横隔膜疲労)を作成した後にPSV(pressuresupportventilation)を用いた補助換気を行うと、筋力の回復が遅れる可能性について報告した。ここまでは正常肺を対象としていたが、臨床的な呼吸筋疲労の発生時には補助換気実施後にも呼吸負荷が残存しているのが普通である。今年度は疲労作成後に呼吸負荷をかけ、負荷に対してPSVを行った場合の疲労回復について検討した。 「対象と方法」家兎20羽を対象とした。気管切開を行い、両側の外頚静脈から神経刺激電極を挿入し、最大上刺激刺激電圧で50Hz、dutycycle0.5、50回/分で30分間刺激して横隔膜疲労を作成した。疲労作成前に測定した筋力をコントロールとした。疲労作成後、自発呼吸とした群(SB群)、呼吸負荷のみをかけた群(人工呼吸器回路の吸気側に-60cm水柱の陰圧がかかると開く吸気弁を挿入。LD群)、呼吸負荷をかけPSV60cm水柱を付加した群(PSV60群)、80cm水柱のPSVを付加した群(PSV80群)の4群に分類し、筋力の回復程度を観察した。「結果」疲労回復はSB群に比較してLD群とPSV80群とで有意に遅れた。PSV60群ではSB群とほぼ同程度の筋力の回復がみられた。 「結論」横隔膜疲労の発生後に呼吸負荷をかけると呼吸筋疲労の回復は遅延する。呼吸負荷とほぼ同等と考えられる補助換気(PSV60)を行うと筋力の回復は早まった。しかし、過大の補助換気(PSV80)を行うと疲労回復はむしろ遅延した。この結果は、正常肺を用いて行った昨年度の研究結果と同様であった。PSVにより呼吸仕事量を過大に軽減すると、呼吸筋疲労は回復が遅れる可能性がある。
|