低酸素性肺血管収縮(HPV)の機序を検討した。家兎の摘出灌流肺を拍動流ポンプにて毎分40ml/kgで再灌流し、肺動脈圧と灌流量を測定した。HPVは吸入酸素濃度を21%から3%に減ずることにより起こした。灌流液は自家洗浄赤血球と3%アルブミン加Physiological salt solutionの混合液を用いた。電気回路モデルに対応させて、拍動する肺動脈圧と灌流量の連続記録から、中枢および末梢肺動脈の血管インピーダンスなどをフーリエ変換により算出した。 【結果】1.ヘマトクリット上昇によるHPVの増強は、中枢肺動脈の血管抵抗の上昇による。2.揮発性吸入麻酔薬イソフルラン吸入によるHPVの減弱は、中枢肺動脈の拡張による。3.一酸化窒素吸入によるHPVの減弱は、中枢および末梢肺動脈の拡張による。4.エネルギー状態賦活剤であるホスホエノールピルビン酸(PEP)により肺動脈圧が上昇し、また、HPVが増強した。 今後は人工血液でHPVを観察し、その人工血液の肺循環や酸素化能においての安全性を検討する。また、人工血液中の一酸化窒素濃度を定量し、人工血液の内因性の一酸化窒素の不活化作用を検討する。また、PEP処置前後での灌流液中の赤血球のATP(化学発光法)、2、3-DPG(酵素UV法)を定量し、赤血球のエネルギー代謝の変化を評価しさらに赤血球変形能の変化をフィルター法で測定する予定である。
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